何故、脂肪注入再建に魅力を感じたのか

私は、美容外科のキャリアをスタートしたのは、
乳がん術後のバストに脂肪を注入して再建する脂肪注入再建を行う事が出来る乳腺外科医になりたかったからだ。
ただ、脂肪注入するだけの医師ではなく、脂肪注入が出来る「乳腺外科医」という点がポイントだ。
そもそも、脂肪注入再建に興味を持った理由はシンプルだ。
私はバストにこだわりがあることは、以前のブログで記載した通りだ。
乳腺外科医として、乳がんの患者さんに対して乳腺を切除する手術や薬物での治療を行う側の人間であり、がん治療としての安全性を最優先する基本概念は他の乳腺外科医の
医師と同様である。
一方で、「もし自分が患者さんだったら、どうしても満足出来ないであろう」と、外科医なりたての頃から思っていた事がある。
それが、「治療に伴って変化する見た目」に関する事だ。
近年では、「アピアランスケア」という概念が普及してきており、情報に触れられる患者さんも増えたのではないだろうか。
国立がん研究センターによると、アピアランスケアは下記のように定義されている。
「アピアランスケアとは、がんやその治療に伴う外見変化に起因する身体・心理・社会的な困難に直面している患者とその家族に対し、診断時から包括的なアセスメントに基づき、多職種で支援する医療者のアプローチである。」
がん患者さんが見た目に対して、ケアしたいという自然な心理が認められるようになり、サポート体制が整ってきているという事だと理解している。
アピアランスケアについては、別の記事で詳細を述べようと思う。
今回の記事では、私が特に力を入れている脂肪注入再建について、私が興味を
持ち始めたきっかけについて述べる。
大前提として、これから述べる事は、日本の形成外科の技術が低いという事では決してないので、その点はご理解頂きたい。
バストにこだわりを持つ私は、学生時代の英語の授業で「自分が乳がんになったとしても、バストにメスは入れたくない」というようなエッセイを書いたような記憶がある。
多くの乳腺外科医からすると、理解力の悪い患者と思われるだろうが、
私の原点はここにある。
治療の必要性についても理解するし、がん治療において犠牲となる見た目について、もし自分が患者になったら、ある程度の変化は受容しなければいけないと自分に言い聞かせると思う。
一方で、もし本音を言って良いとするならば、
もし自分が患者だった場合に満足出来るであろう乳がん術後の再建症例に出会った事がない。
左右差や人工物感が目立ったり、自家組織再建であれば大きな傷が残る。
どうにかならないものかと調べていた時に出会ったのが、
Miami Breast Centerの Dr. Roger Khouriの脂肪注入による再建症例の写真だった。
これが本当に乳がんの術後なのか、そして脂肪だけでこの結果が出ているのか、と
当初は信じ難く、衝撃を受けた。
論文やインターネット上のビデオな度を調べてみると、どうやら本当に脂肪だけでこの
美しい結果を出しているらしいという事は理解した。
そして、日本で脂肪注入再建を行っているのかと調べると、ごく一部の病院で自費診療として脂肪注入再建がHPに記載されていた他、一部の美容外科で、形成外科医出身の医師が行っているという事が分かった。
乳腺外科医でも脂肪注入再建がどのようなものかを知っている医師は少ない。
なぜ、日本で脂肪注入再建が普及しないのか、考えた。
・そもそも認知されていない
・自費診療のため高額である
・複数回の治療を要する
・その割に、良い結果ではない
と、脂肪注入再建を知っている乳腺外科医からも評価が低かった。
海外の脂肪注入再建症例を見て、このような結果を出せる技術をより多くの患者さんに届けられるようになりたい、と心の底から思った。
そして、乳腺外科医に対して、脂肪注入の良さを説明出来るためには、乳腺外科医であり続ける必要があると感じた。
自分自身も、乳がんの患者さんに向き合う乳腺外科医を続けたいと思っていた。
ただし、非常勤で脂肪注入について学べる場所はなく、
また、新しい技術を学ぶ上では一度しっかりその環境に身を置く必要があるとも感じた。
そのような経緯から、
「乳房再建外来」があるとホームページに記載されていた
脂肪吸引・脂肪注入を専門とする美容クリニックに入職し、
非常勤で乳腺外科医としての勤務を細々でも続けるという選択をした。
実際に入職してみると乳房再建外来というのは実在していなかったのだが、
とても実直で基本に忠実な理事長の先生にはとてもお世話になり、感謝している。
日本で脂肪吸引・脂肪注入のパイオニアとして、多くの若手医師を育成した先生から直接、
丁寧にご指導頂き、脂肪吸引・脂肪注入の基礎を学ばせて頂き、経験を積ませて頂いた。
美容外科の業界の文化に慣れるのにも一苦労した(今もしている、というか慣れない)が、
根拠に基づき、患者さんに良い治療を、という信念は貫き続けている。
そして、自分で脂肪注入を行う結果や、日本で行われている脂肪注入の結果と、
Dr. Roger Khouriが作り出す結果はなぜこんなにも違うのか、と勉強を続けた。
論文を多く読むうちに、脂肪外科学という学問に魅せられ、
自分自身が行う診療にも学んだ知識を活かせるようになってきた。
脂肪注入再建という方法は、
シリコンインプラントという異物を用いる事なく、自家組織再建のような新たな大きな傷がつくこともなく、
部分切除による変形や左右差を改善し、温かく柔らかいバストを叶える方法であると確信している。
私が脂肪注入による再建を行った乳がん術後の患者さんから、
「やって良かった」
「家族にも相談出来なかったけれど、ようやく前を向けた」
「傷の下もふっくらして、自分らしさも楽しめるようになった」
というお声を頂くと、私自身も嬉しくなる。
知識や技術の進歩に終わりはなく、国内に限らず、国外からも積極的に知識と技術を学び続けたいと考え、日々診療に臨んでいます。
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